大阪高等裁判所 昭和41年(ネ)1229号
主文
一、控訴人の原判決中登記手続請求部分に対する控訴を棄却する。
二、被控訴人らの請求の減縮により原判決中右部分は次のとおり変更する。
三、控訴人は被控訴人らに対し、第一審判決添付別紙第一目録記載の土地、建物について、和歌山地方法務局昭和三一年一月二六日受付第九七八号をもつてなした同月二四日遺産分割による取得者を控訴人とする所有権移転登記を、取得者を被控訴人西畑幸子持分九分の三、同西畑道子持分九分の二、控訴人持分九分の四とする所有権移転登記に、一部抹消(更正)登記手続をせよ。
四、被控訴人らの控訴人に対する登記手続請求部分の訴訟の総費用は、控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、「原判決中控訴人に登記手続を命じた部分を取消す。訴訟費用は被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、「右控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めるとともに登記請求を主文第三項のとおり減縮した。
当事者双方の主張並びに証拠関係は、次に付加、訂正するほか、第一審判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
控訴代理人において、
控訴人は遺産分割によつて取得した原判決添付別紙第一目録記載不動産のうち、和歌山市○○△△△番地田一反七畝二○歩外九歩畦畔につき、被控訴人道子から借用した金二〇万円のために昭和三一年二月六日抵当権を設定し、その旨の登記手続を経た。そして、その一年後に、控訴人は同被控訴人に右借金を返済し、同人の同意を得て抵当権の抹消登記手続をした(乙第三、六号証)。この事実は被控訴人幸子も当時承知していた。そうすれば、被控訴人両名は、遺産分割協議書(乙第一号証)が正当に作成されたものであつて、控訴人が原判決添付別紙第一目録記載の土地建物を所有していることを承認していたものである。従つて、同目録記載の不動産が控訴人の所有である旨の登記は、いずれも事実に符合し、正当のものである。
と述べ、
被控訴代理人は、
一、右抵当権設定登記手続は、控訴人が独りでこれにあたり、被控訴人等は全くその手続に関与しなかつたし、その登記後も抵当権設定金円借用証書(乙第六号証)を手渡されただけで、その登記簿騰本を見せられることもなかつたので、被控訴人等は右乙第六号証記載の不動産の控訴人の持分について抵当権が設定されたものと解していた。
二、差戻前の全部の抹消登記手続の請求の趣旨をその有する持分の限度において登記と実体関係とを符合させる趣旨で、一部抹消(更正)登記手続の請求に減縮する。
と述べた。
被控訴代理人は甲第一九号証を提出し、当審証人山形光男、米沢清の各証言、被控訴人西畑幸子、西畑道子各本人尋問の結果を援用し、乙第一一号証の一、二の成立は認めるが、第一二号証の一、二の成立は不知と述べ、控訴代理人は乙第一一号及び第一二号証の各一、二を提出し、当審証人大谷益ノ助、米沢耕一の各証言、当審の控訴本人尋問の結果を援用し、甲第一九号証の成立は認めると述べた。
原判決六枚目表二行目に「鶴岡国夫」とあるを「鶴見国夫」、同一〇枚目表二ないし三行目に「に大谷益之助」とあるを「大谷益ノ助」、同三行目に「鶴岡富男」とあるを「鶴見富男」と各訂正する。
理由
一、当裁判所は、被控訴人らの控訴人に対する所有権移転登記の一部抹消(更正)登記手続を求める請求を次の理由により正当と判断する。
1 第一審判決添付部紙第一目録記載の土地、建物につき、被控訴人西畑幸子が九分の三、同西畑道子が九分の二の各持分を有することの確認を求める被控訴人らの請求については、すでに昭和三九年九月九日を事実審の最終口頭弁論終結日とする判決によつて確定したことは記録上明らかである。
2 被控訴人らは昭和三〇年五月二九日控訴人及び訴外(第一審共同被告)西畑喜一と共同して亡西畑庄助の遺産を相続したこと、その遺産に属する第一審判決添付別紙第一目録記載の土地、建物について、昭和三一年一月二六日付で、同月二四日の遺産分割による控訴人のみの単独名義の所有権移転登記がなされたことは当事者間に争いなく、成立に争いない甲第二号証の一ないし六によると、昭和三一年七月二〇日付で右西畑喜一のみの単独名義の所有権移転登記がなされたが、その後同年一二月一四日付で右登記が抹消され、次に同日付で被控訴人ら、控訴人及び西畑喜一が共同相続した旨の所有権移転登記がなされたことが認められる。
3 控訴人主張の遺産分割が認められない場合(前記確定判決の理由中において右主張は排斥されている。)においても単独名義の登記を争う他の共同相続人はただその持分の限度において現在の権利関係に符合するよう登記の一部抹消(更正)登記手続を求めうるに過ぎず、その部分を越える抹消登記手続を求めることは許されないと解するを相当とするところ、被控訴人らは、差戻後の当審において請求の趣旨を減縮し、その持分の限度において登記と実体関係とを符合させる趣旨で一部抹消(更正)登記手続を求めるから、被控訴人らの請求は正当として認容すべきである。
二、よつて、控訴人の原判決中登記手続請求部分に対する控訴を棄却し、請求減縮により原判決を変更し、民訴法九六条、八九条に従い、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 村瀬泰三 裁判官 長瀬清澄 田坂友男)